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新型コロナウイルスの重症者は実際どんな感じ?

Virus Infection Death Spooky  - Henrix_photos / Pixabay

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中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、今や全世界に広がりパンデミック(世界的大流行)の状態にあります。
私たちが生活する日本でも同様に毎日のように新型コロナウイルスについての報道がされ、つい先日までは「緊急事態宣言」が出される状況にありました。

日本の総人口は、1億2593万人です。
これまでの新型コロナウイルス感染症の感染者数は21,129名のため、人口から考えると約0.0167%の人が感染していることになります。
感染者数が総人口1%にも満たない新型コロナウイルスの何が怖いのかを考えてみますと、その重症化率・死亡率です。

日本国内での新型コロナウイルス感染による死亡者数は、982名です。
つまり、新型コロナウイルスに感染した人の4人に1人が死亡してしまっている現実があります。(2020/07/11現在)

死亡してから新型コロナウイルスに感染していたことが分かった症例もいますが、今回は「新型コロナウイルス感染症の重症者」に焦点を置いてお話しします。

【国内の状況】
7月11日現在の新型コロナウイルス感染症に関する状況及び厚生労働省の対応についてお知らせします。
国内での新型コロナウイルス感染症の感染者は21,129例、死亡者は982名となりました。
また、入院治療等を要する者は2,078名、退院又は療養解除となった者は17,849名となりました。

【PCR検査の実施状況】
2月18日~7月9日までの国内(国立感染症研究所、検疫所、地方衛生研究所・保健所等)におけるPCR検査の実施件数は、778,122件

引用:厚生労働省ホームページ

こんな方におすすめ

  • 新型コロナウイルスの情報がなんでも欲しい
  • 「重症者」とはどんな状態なのか知りたい
  • 実際の医療現場での話を知りたい
  • 他の施設の対策を知りたい

〇〇な状態=重症者?

新型コロナウイルス感染者における重症者とはどのような状態を指すのでしょうか。
それは「人工呼吸器」の装着が必要な人「体外式膜型人工肺(ECMO)」が必要な人を指します。

私たちは正常な状態であれば空気中に存在する気体のうち、約21%の濃度を持った酸素を吸うことで身体の組織や細胞に十分な酸素を送り届けることができています。
しかし、炎症が起こると身体の中では普段よりも体温を上げて侵入者と戦おうとするため、普段よりも酸素が必要になります。
ですが、新型コロナウイルス感染症に感染することで肺に炎症が起き、吸った酸素を十分に吸収できないまま息を吐き出してしまうようになります。この結果、身体が酸素を求めて「息が苦しい」と感じるようになります。

この状態は50m走や100m走をダッシュした後に感じる息苦しさに似ています
身体に酸素が足りていない状態が長く続けば続くほど、脳や心臓などの大切な臓器が破壊されていきます。
それでは生きていくことができないため、私たち医療従事者はどの程度酸素が足りていない状態なのかを検査しながら酸素を投与します。

通常の酸素を患者に与える方法は、ドラマでよく見るような酸素マスクだったり、鼻に装着するチューブだったりします。
しかし、新型コロナウイルス感染症に感染した患者に酸素を投与する場合には酸素マスクを使用することでウイルスが周囲にばらまかれてしまうため、酸素マスクが必要になった状態で気管内挿管と言って口や鼻から空気の通り道に管を入れて人工呼吸器を装着します。

人工呼吸器は100%の酸素と圧縮された空気を機械の中で混ぜ合わせて、患者に必要な分の酸素濃度の気体を患者に送り出す機械です
気体を送り出す以外にも、肺が潰れてしまわないように肺に圧をかけ続けたり、圧をかけて気体を送り出すことで患者が息を吸おうとした時に楽に肺まで気体が届くようにすることができる機械です。

ですが、人工呼吸器は気体を患者の肺まで送り届けるための機械のため、患者の肺が送られてきた酸素を取り込むことができないほどダメージを負っている場合には、体外式膜型人工肺(ECMO)という装置が必要になります。

体外式膜型人工肺(ECMO)は、患者が自分で呼吸を行わなくても、酸素が臓器や細胞に行き届くようにする機械です
身体(血管)に挿入された管から血液を機械の方に回収して、遠心ポンプで酸素と血液を結合させてから酸素が十分含まれる血液を患者に返します。
そうすると、身体の臓器や細胞に酸素が届けられて酸素不足だった身体の中が回復していきます。

これらの人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な状態は、自分だけの力では生きることができないため「重症者」と分類されます。

普通の入院生活とは違う?新型コロナウイルス感染症に感染して入院した場合

新型コロナウイルス感染症に感染して入院した患者への対応は、様々な学会や機関からガイドラインが設けられています。
施設によっても受け入れ可能な規模や設備的な問題で対応はそれぞれ異なりますが、わたしが勤務する集中治療室での対応についてここでは紹介していきます。

新型コロナウイルスは強い感染力があるため、一般の居室(病室)で管理することはスタッフや他の患者を守るためにできません。
そのため「陰圧室」と呼ばれる部屋に入院することになります。
この陰圧室とは、言葉の通り部屋全体が陰圧で管理されている病室です。
ウイルスが病室の外に出ようとしても陰圧がかかっているため周囲にウイルスが飛散しないように設計されています。

施設によって広さは異なりますが、国が定める集中治療室の広さの基準として「1床あたり20㎡の広さがある」ことが決まっています。
一般床は施設形態によって違いますが「1人あたりの床面積6.4㎡以上」が定められているため、一般床と比較すると3倍以上の広さの個室が集中治療室では用意されています。

通常であれば、看護師や医師が患者に処置を行う時にはマスクやガウン・手袋などの感染防護具を使用します。
ただ問診や状態観察を行うのみであれば何も感染防護具を付けないことも多いです(スタッフ個人の責任ですが)。
しかし、新型コロナウイルス感染症に感染した患者に接する場合の感染防護具は以下の通りです。

新型コロナウイルス感染症に対する感染防護具

N95マスク
ゴーグル付きのマスク
ヘアキャップ
ガウン
手袋2枚(ピッタリするタイプと通常使うタイプ)
(アビガン投与時は)ビニール製ガウン

新型コロナウイルス感染症に感染した患者の恐怖と対策について

少し違いますが、上記の感染防護具を装着した時のイメージとして、このような感染防護具を装着して患者に対応することになります。

看護師も医師もスタッフ全員がこのような格好をしているため、患者から見ると医療従事者の目元しか分かりません
自分を担当している人がどんな人なのかも分からず、それどころか表情も不明ですし、名前ですら表記されていません。
よく看護学校や医療系ドラマでも「医療従事者の笑顔が患者を安心させることができる」と習ったりセリフで話していたりしますが、新型コロナウイルス感染症に感染した患者に対しては笑顔を見せることができません
つまり、患者は表情も分からないし声でなんとか性別が分かるような相手に自分の全てを委ねなければいけない恐怖があります。

この対策として、アメリカや私の所属する施設では感染防護具の上にスタッフ本人の写真と名前を大きく印刷した紙を貼ったり、スタッフによってはその人の性格が分かるような写真を貼ったりしています。
これで100%安心できることは無いかと思いますが、何も無いよりはマシだろうということでスタッフに必要性を説明して始めました。

また、現在も多くの医療施設が感染症拡大防止のために「面会禁止」の対策を行っている状況ですが、もちろん新型コロナウイルス感染症に感染した患者家族に対しても同じように面会禁止とさせていただいています。
もっと言うと、潜伏期間を鑑みて2週間の外出禁止が各自治体や保健所から言い渡されるために家族は病院に来ることすら叶いません。

そのため、私の施設での対策として患者・家族の希望がある場合に患者のスマートフォンやiPhoneを使用し、患者の写真を撮って家族にLINEでその日の様子についてコメントをつけて送信して対応しています。(患者に意識がない状態の場合)
患者に意識がある場合には、患者が家族とテレビ電話ができるよう説明を行ったり、LINEなど家族と連絡を取ることができるように対応します。

院内全体として面会禁止の対策をしているため、通常の入院患者の家族への対応としても、患者の情報提供の希望がある場合は病院から登録されている家族へ電話をかけて、その日の患者の様子を看護師や医師から伝えています。

新型コロナウイルスは未だ不明なことが多く、確実な治療方法や予防方法・重症化しやすいのかどうかのスクリーニングなど医療従事者も手探りの状態でとにかく対症治療を行うしかない状態です。

医療従事者ですらその状況であることに加えて、テレビなどのメディアの放送では「死に至るウイルス」「芸能人の〇〇が死亡」「本日の感染者数は〇〇人」など恐怖を煽る(事実ではありますが)報道が数多くされています。

退院又は療養解除となった者は17,849名のため「新型コロナウイルスに感染した人の約84%は状態が改善している」と言う報道はほとんどされていません。(7/11の発表から計算しています)
そのため、新型コロナウイルスに感染した=自分は死んでしまうのか?と言う恐怖が患者にも、その家族にも付きまといます

人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)使用中はただ生かされている?

「重症者」の治療として、人工呼吸器を装着することや必要に応じて体外式膜型人工肺(ECMO)を装着することがあることは先述しました。
それらの機器が装着された患者はどのような状態なのかを説明します。

通常の疾患に対する人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を装着している場合においては、患者の状態にもよりますが患者は意識がある状態で全身管理されます。

しかし、新型コロナウイルス感染症によって人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を装着された場合には、手術で使うような強い麻酔薬を使用して深い眠りの状態に管理されます(わたしの施設では)。

集中治療室に入室している約8割の患者が「せん妄」と言う状態にあると言われています。
先述したような「恐怖」や「脳に酸素が足りていない状態」「集中治療室の環境」「自分の身体に何やらよく分からない管がたくさんついている状態」など様々な要因によってせん妄は引き起こされます。

このせん妄の状態になると、普段はとても理性的で知的な人であっても現状を理解できずに暴力や暴言を吐くことや、身体についている管をちぎったり引き抜いてしまったりします。
またはベッドから無理やり降りようとして骨折してしまったり脳出血を起こしてしまうこともあります。

通常であれば、看護師や医師が患者のすぐ近くにいてそのような危険行動を起こしてしまってもすぐに対応できるよう環境を整えたり寄り添ったりして対応しています。

しかし、新型コロナウイルス感染症の患者の場合にはスタッフが感染しないよう、最小限の患者との接触になるようにしています
そのため、もしも患者がせん妄状態で暴れてしまってもすぐに駆け寄ることはできないことと、人工呼吸器が患者から外れてしまった場合(正しくは挿管チューブという口に入っている管)に、新型コロナウイルスが部屋中に飛散してしまうため医療従事者が感染しやすくなってしまう恐れがあることから、患者に強力な麻酔薬を投与して自分で管を触ったり抜いたりしてしまわないように管理します。

つまり、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を装着しているような重症者は、意識がない状態で数日〜数週間過ごすことになるため、「ただ生かされている状態」といえます。(あくまでわたしの施設の場合)

目が覚めた後の状態はどんな状態か

それらの機械を外すことができる程度まで患者の状態が改善した時に、少しずつ麻酔の量を減らして覚醒させます。
患者にとっては、知らない間に数日〜数週間経過している状態で目が覚め、麻酔薬を使用していても患者によっては断片的に記憶が残ることが多いため、記憶の無い期間を脳は「悪夢」のような妄想で記憶を繋げようとします

この「悪夢のような妄想」とは、例えば「悪魔が自分に酷い仕打ちをした(看護師の外見が醜い悪魔のように見えている)」「身体中にヘビがうごめいていた(ヘビ=治療用の管や心電図のコードなど)」など思い出したくない記憶としてトラウマになったりします。

これは通常起きている「せん妄」でも同じことが言えるため、今世界中でPICS(集中治療後症候群)の一部に位置付けられて対策・予防法が研究されています。

しかし、徐々に体調が改善してリハビリが進んでいくと日常生活を再び過ごすことができるように回復していきます。

人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が外れた患者はどうなる?

患者の状態が回復し、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)から離脱できた場合には患者の状態によって新型コロナウイルス感染症に対応できる一般病棟に転棟します。

一般病棟に転棟後は、リハビリを行いながらタイミングを見てPCR検査を2回行い、2回とも陰性が確認できた場合には患者の状態にもよりますが退院して自宅に帰ることができます。

まとめ

人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を使用することによる弊害はたくさんあり、今回の記事のように全症例がスムーズに退院までこぎつけることは少ないです。
ですが、新型コロナウイルス感染症に感染・重症化してしまった患者の様子や医療現場の様子がイメージできたでしょうか?

いつ収束するとも分からない不安定な世界情勢ではありますが、読者のみなさまのご健康をお祈りしております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

質問や感想などコメントお待ちしております!!
ではまた!

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SNOWTIME

20代後半の男性看護師 集中治療領域の部署に勤務して7年目 アウトドアブランド「snow peak」をこよなく愛しており、snow peakのギアに囲まれて生活できることに興奮を覚え、Youtubeでsnow peakの商品を紹介している 「動画を撮影するのにもっといい機材を使いたい」と思うようになりSNOYのα6600を購入 その後、キャンプ沼・カメラ沼にどっぷり浸かっている

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